第4話「孤独な王様」
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 細い手足がばらけて床に散らばっている。まだ幼い国王は、しりもちをついたまま呆然と彼女を見上げた。
 シラはあたりの花も霞むほど華やかに微笑んでいる。
「どうしたんですか?」
 むせ返るほどの甘い香りが部屋の空気を濁らせていく。シラは、王を殴った本を優雅なしぐさで膝に置いた。
「大丈夫ですか? どうしたんですか、急に転んだりして」
 国王は声もなく口を動かす。まだあどけない顔に困惑を色濃く浮かべ、視線をあちこち迷わせた。
「い、今、なぐって」
「え?」
 シラは小首をかしげると、近くに置かれた花瓶を取る。
「今、君がぼく、本でっ」
 そして平然とした顔のまま、それを王の傍に叩きつけた。
 花瓶はごく近くで割れる。音と破片が彼の隣に飛び散った。鋭い陶器が床についた腕をかすめる。
「あら」
 整ったシラの顔にはわずかな歪みも表れない。きょとん、と無邪気に目を丸くする。
「危ないですよ。花瓶を運ぶ時は気をつけなくちゃ」
「な、な、何言ってるの? だってこれ君が」
 君が、とさした指は震えて揺れる。曖昧な示しを受けたその先で、シラはまた首をかしげた。一体何を言っているのかわからないといった風に、ごく自然な表情で。
「何を言っているんですか。今、あなたが落としたんじゃないですか。ねぇブライさん?」
「はい」
 部屋の隅で待機していたブライが深くうなずいた。
「僕もこの目で見ましたよ、陛下が壊すところを。駄目ですよ陛下、物を粗末にしてしまっては」
「何言ってるの!?」
 悲鳴を上げるがブライはそれを受けとめない。片眉をわずかに上げて、やれやれと息をついた。
「すみません。普段から、人のせいにしてはいけないと注意はしているんですが」
 そうシラを見つめる目はとろりと甘くとろけている。浮かぶのは、あからさまな好意と憧憬。香りの毒に脳を浸して口許は危うくゆるむ。
「なんで!? ブライ、なんでそんなこと言うの!?」
「陛下、どうしたんですか。ごめんなさい、いつもはもっと賢い方なんですが」
 王は泣きそうな顔で首を振る。シラの手がそれを止めた。国王はびくりと震え、怯えた目で彼女を見る。破片の散らかる床に座り、王の高さに目線を合わせ、シラはにっこりと微笑んだ。
「少し、お話をしましょうか」
「い、いやだ! ブライ! ブライ!!」
 助けを求めても、ブライはだらしなくゆるんだ顔でシラだけを見つめている。すがろうとする王の目は、行き場を失い涙に潤んだ。シラは彼を励ますように言う。
「大丈夫、私がいますよ」
 無音の叫びが小さな口に吸い込まれる。腰の抜けた彼の腕を、シラの手がそっと包む。国王は振りほどこうと暴れるが、その途端、華奢な腕は折れるほどに強く握られた。国王はおそるおそるシラを見る。そこには優しい微笑みがあった。今にもこぼれそうな涙を浮かべる王を、やわらかな声が撫ぜる。
「質問です。『花はなぜ美しいのでしょう』」
 握る手に力がこもる。王は手首を締めつけられたまま、助けを求めて部屋を見回す。だがあるのは壁に飾った造花ばかり。黄色のそれを一通り探った後で、彼はごく近くの花に目を戻す。
 シラは視線を受けて心得たように微笑んだ。目の前で開く大輪の花。理不尽な悪夢にも似た景色の中に、ふわりと咲いた華やかさ。ブライがほうと息をついた。国王でさえ、恐怖心をどこかに忘れて彼女を見つめる。
 花はなぜ美しいのか。
 甘い香りが漂う中、答えは自然と口をつく。
「きれいだと、みんなが嬉しいから?」
 シラはやわらかく微笑んだまま、王の体を突き飛ばした。
「違います」
 優しい声が後に続く。王は動き方を忘れたように、転がされたままシラを見上げる。
「どうしました陛下。また、勝手に転んだりして」
 笑顔も纏う雰囲気も、何もかも変わらない。
「い、いまいま君がっ」
 シラはまた不思議そうに小首をかしげる。
「え? 私は何もしていませんよ。ねぇブライさん?」
「そうですよ陛下。ちゃんと立っていないと駄目じゃないですか」
「ブライ!」
 泣きそうな顔で見つめても、返されるのは茫洋とした暗い瞳だけ。それも更に怪訝に歪んで逆に王を叱咤する。
「どうしたんですか、今日は変なわがままばかり。そんなことじゃ立派な王にはなれませんよ」
「ブライ! ブライ、おかしいよ!! なんなの、ねぇなん」
 シラの手が王の口をふさぐ。彼女はそのまま小さな体を抱き寄せた。有無を言う暇もない。懸命に暴れるが、子どもの力は呆気なく押さえられて背後から抱きしめられる。
「ブライ! ブライ、助けて!!」
「陛下、あまり騒がないで下さい。他の人たちが驚きますよ。申し訳ありません人魚さん」
 耳元でシラが笑う。そのまま甘い声が続く。
「いい子にしなくちゃ駄目でしょう?」
 幼い体は恐怖に縛りつけられた。抵抗がぴたりとやむ。そのかわりに震えが始まり、歯はがちがちと音を立てる。
「それでは正解を教えましょうか。花はなぜ美しいのか。誰かを喜ばせるため? 違います。部屋に飾ってもらうため? 違います。鏡を見て満足に浸るため? 違います」
 しなやかなシラの指が、背後から彼の頬をなでた。
「オスを引き寄せるためですよ」
 冷めた声が答えを告げる。解説が後に続く。
「繁殖するためには雄花の花粉を集めなくてはいけません。聞いたことはありませんか? それを運ぶのは虫です。雄花は花粉をより連れて行ってもらえるように、雌花は花粉をより運んできてもらえるように、虫たちの気を引く姿を取りました」
 くすくすと楽しそうな笑みがもれる。青ざめた王のうなじをくすぐる。
「私の顔はきれいでしょう? 人魚はみんな同じです。特徴は違っていても、それぞれに美しい顔をしている。それは花と全く同じ。その方が繁殖に有利だからです」
 くちびるを彼の耳にあて、低く昏い声で囁く。
「ヒトのオスを騙すため、私たちは進化したの」
「へえー。陛下、また一つおりこうになれましたね」
 ブライはのんきに笑いかける。いつもと同じ平和な表情。不条理な温度差に非難の言葉すら忘れ、王はただただ震えるだけ。
「あなたの考える人魚は、ちょっと事実と違いすぎます。ひとつずつ、人魚についてお勉強しましょうね」
 その体をぎゅっと優しく抱きしめて、質問を更に続ける。
「第二問。人魚はみんな長い髪を持っています。それはなぜ?」
「な、な、な」
 形にならない声をさえぎって、先に答えを言ってしまう。
「魚をおびき寄せるため。外敵を払うため。大切な顔……繁殖器を守るため」
 長い髪を一房つまみ、掲げて王に見せつける。
「人間とは違いますから、前髪も何も伸ばしっぱなしです。今は後ろにやっていますが、水中では後頭部よりもむしろ顔を覆うように流します。それが普段の人魚の姿。そもそもこれは髪というより皮膚ですから。ひれやうろこが変化したものです」
「へぇー。凄いですねえ陛下」
 国王は涙目で首を振る。だがシラもブライも構わない。
「この顔は何よりも大切な部位ですから、使うときにしか出しませんよ。普段は髪の奥の方に隠しています。魚をおびき寄せるというのは……」
 シラは一つため息をつく。芝居めいたわざとらしい挿入句。
「本当は定期的に人間を食べられれば問題はないんですが、そう毎日のようにはいきません。“あなたたち”はごちそうですからね。普段はただの魚ばかり食べています」
 初めて聞いた捕食の事実に王は激しく暴れ始める。シラはそれを締めつけて、変わらない声で続ける。
「この髪は水を浴びるときらきらと輝きます。その光は魚を呼ぶためのもの。私は口のそばに集まってきた魚たちを、ひと呑みにする。それで食事は終わりです」
「うわぁ、人魚のしくみってよく出来てますねえ陛下」
 その陛下はまだ首を振っているが、やはり誰も構わない。シラは更に解説する。
「非常時には、後ろの髪は赤紫に染まるんです。元々水中だと自由自在に動きますから、体を大きく見せて、外敵を威嚇します。空気中だとちょっと難しいんですけどね」
「なぁんだ。是非見たかったですね、陛下」
 国王はとうとう泣き出した。勢いがついて止まらなくなったかのように、何度も何度も首を振り、わんわんと声を揺らす。堰が切られてしまったように、わめきは音量を増していく。
 シラは彼を解放した。へたりこむ体を向き直らせ、泣き顔をまっすぐに見つめて微笑む。
「何を夢見ていたんですか?」
 亡き王妃の描いた情景。無条件に王を愛し、一生を捧げた美しい幻想生物。この子どもがずっと熱望してきた存在を崩した口で、シラは静かに事実を告げた。
「私たちは動物です。ただの、動物なんです」
 小さな王はまた大きく首を振る。まだ希望を捨てたくないと言うように、夢を見たいと言うように。
「だって、だって人魚は……っ」
「人魚が人を好きになるはずがないじゃありませんか」
 シラは楽しそうに笑う。だがその目にはおそろしく冷たい色が浮かび上がった。
「人の王を愛し続ける? 自ら人に成り下がる? どうして。あなたたちは、私たちにとって、ただの食べ物でしかないのに」
 口許には笑みがある。声も楽しく弾んでいる。だが目には、初めて彼女の思考が浮かんでいた。微笑みの奥で絶え間なく続いていた静かな策略。それが、すっと奥に引く。隠された後は今まで通りの優しい微笑み。
「あなたはニワトリに恋心を抱けますか?」
 それとは対照的に、王は顔をぐしゃぐしゃにして泣きわめく。
「うそだ、うそだああ」
 そこにいるのはただの一人の子どもだった。憧れを打ち砕かれた、幼い生き物。
「陛下、どうしてそんなに泣くんです? 今日はちょっとおかしいですよ」
「僕はおかしくない!!」
 差し出したブライの手を叩き落し、さらに叫ぶ。
「おかしいのはブライだよ! 変だよ、おかしいよ!!」
 ブライはきょとんとした目で王を見つめ、尋ねるようにシラを見た。シラも同じ顔をする。ブライは心底不思議そうに、いつも通りの声で言った。
「僕はいつも通りですよ。どこもおかしくありませんよね、人魚さん」
 泣き声も何もかもが喉の奥に吸い込まれた。言葉を失った王は、真っ赤な顔でくちびるを震わせる。絞りだすように、ひどくかすれた声で言った。
「いらない」
 涙がこみあげる。泣きじゃくりつつ「いらない」と繰り返した。
「陛下」
「お前なんかいらない! だいっきらいだ!! でていけ! お前もでていけよ!!」
 さらに声を張り上げ、耳まで赤くして怒鳴る。ひゅうひゅうと呼吸器官が奇妙な音を奏ではじめた。ブライの動きが、止まる。
「どっか遠くにいっちゃえばいいんだ! でていっ」
 薄い体を折って咳き込んだ。耳障りな雑音の混じる咳。呼吸がかすれ、すきま風のような音を途切れ途切れに立てていく。王は床に膝をついた。硬直したブライの体がぴくりと動く。
「陛下」
 国王はわめきをやめない。
「お前もみんなと同じなんだ! いじわるして僕を助けてくれないんだ!! でていけよ! お前もクビだ! もうぜったいここに入ってくるな!!」
「だめです……お体が、だめです……だめ」
 ブライがかすかに震え始める。彼は頭を抱え、小さく首を横に振った。香りの毒をはねのけて、本当の彼の心が表に出ようとしているのだ。かかる罵倒と自分を縛るシラの毒と、王を思う気持ちとがせめぎあって、彼の思考を破壊していく。
「知らない! 大きな声をだしてもお前には関係ないだろ! 走っても外にでても、夜おそくまで起きてても! 僕のかってだろ!!」
「陛下、だめ、です、あまり、叫ぶ、と」
「もういやだ、もういやだ!! 嫌いだ、ブライもペシフィロもニナもベルーサもナノクもみんな嫌いだ! 僕のしたいことは全部ダメ! 僕は王様なのに! なのに何もできないし、みんなウソばっかりつくし!」
 声は掠れて雑音を帯び、音程すら定まらない妙な音を響かせる。
「なんで僕をたすけてくれないの!? なんでみんな、僕にだけやさしくしてくれないの!?」
 涙があふれ、次々と流れて落ちる。
「なんでみんな僕にだけイジワルするんだよ! みんな、みんなキライだ!!」
 かすれた声を振り絞り、王は怒りのままに叫ぶ。
「誰も僕のこと助けてくれない! 僕はひとりだ、孤独なんだ!!」
 シラの顔から笑みが消えた。指先が埋まるほどに強く王の肩を掴む。涙にぬれた彼の顔が、激しい恐怖に引きつった。
「……孤独?」
 人魚の顔に浮かぶのは、沼底のような憎しみの色。掴む手は激情からわずかに震える。王は小さな悲鳴をあげた。
 何を叫ぼうとしたのだろうか、シラが口を開いた瞬間。
「ああっコラ入るんじゃねえ!!」
 部屋のドアが勢いよく開かれた。飛び込むように入ってきたのは服を着た銀の塊。そしてそこに絡みつく、多種多様な人たちだった。太った男に痩せた男に若い女に初老の婦人。シラは驚きのままに声を上げる。
「カリアラさん!?」
「てめぇ、うちの陛下に何しようとしてやがる!」
 カリアラは太った男に取り押さえられ、痩せた男に鉄鍋で殴られて、若い女に棒で叩かれ初老の婦人に踏みつけられる。混乱した彼はただ魚のように跳ねるだけ。その顔をはじめ、露出した肌にはすべて銀のうろこが生えていた。
 シラの手が王を離れる。怒りも微笑みもどこかに忘れ、ただぽかんと彼を見る。カリアラは抵抗をやめて大人しく目を閉じた。男たちが満足そうに鼻息を吹く。
「陛下っ、大丈夫です! 痴れ者は我々が退治しました!」
 大男は得意そうに肉感めいた拳をあげる。痩せた男は鉄鍋を振り上げた。シラの束縛を逃れて王はふらりと床に倒れる。苦しげに咳き込むと、闖入者たちの目つきが変わった。
「陛下! まあまあまあまあ!!」
 ブライをはねのけて初老の婦人が王に駆け寄る。慣れた手つきで背をなでて、再発した咳をなだめた。
「走ったんですか、それともまたふざけて回転したんですか? ああもう、だから言わんこっちゃない。ニナ、薬!」
「はいっ!」
 若い女が鞄から持参の薬箱を出す。彼女は王を診て症状を確認し、てきぱきと薬の準備を始めた。
「ブライ、てめぇ何やってたんだ! 陛下、大丈夫ですかっ」
「え、あ、あれ? 僕は何を」
 ブライはぼんやりとあたりを見回す。新鮮な空気が入ってシラの毒が薄まったのだ。
「ブライ! いいから水持ってきて!」
 状況をのみこむ間もなく叱咤され、彼はよろけながら慌てて外に飛び出した。それとは逆に、入ってきた者たちは小さな王を取り囲む。それぞれに心配そうな顔でしゃがみこみ、泣きじゃくる主君に目の高さを合わせた。
 シラはカリアラに近づいた。彼は目を閉じたままうつ伏せていて、反応しない。へたりこんで手を伸ばせば、殴られたらしき後頭部が痛ましくへこんでいる。シラは気色ばんで腰を浮かした。
 だがその動きは止まる。シラはそろりと振り返る。
 カリアラが彼女の腕を引いていた。
 澄んだ赤茶色の瞳がまっすぐにシラを見つめる。
「だめだ」
 シラは困ったような泣きたいような、複雑な顔で彼を見返す。か弱いそれは張りつめた力が抜けてしまったようでもあった。何も言えないまま、彼女は床に座り直す。
「……わかった」
 カリアラは手を離し、眠るように床へと伏した。頬のうろこがざらりとした音を立てる。前方では闖入者たちが王をなだめては励ましていた。シラは耳にうるさいそれらを聞いて、彼らが、外で騒ぎを起こしていた“お伺い”の人たちだと気づく。幼い王は呆けた顔で全員を見回している。
「大丈夫。待ってて下さい、薬を飲めばもっと楽になりますから」
「ああ、やっと逢えた! もう衛兵がしつこくてしつこくて!」
「ちゃんと食事は残さず食べているでしょうね? また薬草だけよけていませんよね? 薬も捨ててないでしょうね。もう心配で心配で、俺ァ夜も眠れなくて」
「そうだ、俺新しい料理考えたんですよ! それならもう、治療食もあまり苦くないんです」
「薬も、こんどからは少しなら蜜をかけてもいいですよ。みんなで考えたんです」
「陛下? 陛下、どうしたんですか?」
 王はまた泣きだした。初老の婦人に抱きついて肩を揺らし、彼女に優しく抱きしめられて、か弱い嗚咽を繰り返す。
「あー、もう赤ちゃんみたいに」
「俺たちに会えて嬉しかったですか? ったく、ブライも兵士たちも役になんか立ちゃしねぇ」
「そうそう。もう、私たちがいないと駄目ですねぇ」
 彼らは皆呆れて笑う。泣きじゃくる王を囲み、あたたかい輪をつくる。それを眺めるシラの顔には濃い疲労が張りついた。彼女は薄いため息をつく。
「……カリアラさん」
 王を指さす。カリアラの目がそこに移る。シラは王に聞こえるように、わざとらしい声で言った。
「あの人は、孤独なんだそうですよ?」
 国王が、ハッと二人に目を向けた。カリアラはぼんやりと王を見つめて言う。
「こどく?」
 怪訝な声は、部屋の中にやけに響いた。
 王の顔がみるみると赤くなる。“お伺い”の人々がシラたちの方を向く。カリアラは目を閉じて気絶したふりをした。心配ない、何の異変もないと言うように、家臣らは口々に王を励ます。王はそれを受け取りながら、耳どころか首までを赤く染める。そしてひどく気まずそうに、上目遣いで一人一人を見つめたあと。
「……ごめんなさい」
 と、消え入る声で謝った。一体何を言うのかと、彼らはみな明るく笑う。
 賑わいだした空気の中、王は不安そうにシラを探すが、人魚も魚人間も既に姿を消している。残されたのは、慣れ親しんだいつもの景色と変わらぬ人々。力が抜けて、王は婦人にもたれかかる。
「あら。もう、ちょっといなかっただけで甘え癖が戻っちゃって」
「久しぶりですもんねー。ブライだけじゃあ大変だったでしょう」
「これからは、また俺たちがついてますからね!」
 優しい声と手のひらが、ゆっくりと背をなでる。
 暖かさに包まれながら、小さな王は深い安堵に身を沈めた。


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