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悩める子羊のための相談コーナー
Q.なんか私の目、突然 やおよろずの神さまが見えるようになっちゃった んですけど、どうすれば治りますか?(満潟市/高原澄香さんからの相談)
A.そのままでいいんじゃないですか。

Q.なんか私の目(略)、ここは主人公らしく妖怪退治とかした方がいいんですか?
A.そのままでいいんじゃないですか。

Q.いやいやこのままじゃ私がフツーに日常生活を大量の神さまと暮らすだけの小説になっちゃうんですけど大丈夫なんですか。なんかテコ入れとか……。
A.そのままでいいんですよ。

というわけで、年末にそんな本が出ます。




 大好きだった祖母が亡くなった夜、私は庭の祠に宿る《家神》と出会った。まだ若く見える顔立ちに老獪な笑みを浮かべ、着流し姿のその男は楽しそうに言ってみせる。
「わしはもう田舎には飽きたのだ。ここはひとつ、逃避行と洒落込もうじゃないか」

 その瞬間、私は、神さまに取り憑かれた。

 家神の本体である石を手にした時から、私の目には八百万(やおよろず)の神さまが目に見えるようになってしまう。かまどの神に便所の神、鏡の神に米びつの神などつくも神もあふれだす。一人暮らしのワンルームは、あっという間に神さまたちの集会所と化してしまった。

「呼ばれて飛び出て道祖神ー!」
「出やがった!」
 ご近所の道祖神《ミチカタ》は、派手な黄色のパーカー姿の陽気な若者。

「時代は今自由な夫婦構成を求めておるのじゃ。いわゆる熟年離婚というやつじゃの」
「そんな中途半端に現代用語を入れられても!」
 実家から送られてきた雛人形は、夫婦喧嘩を始めてしまう。

「まがりなりにも客商売なんだから、仕事中にワラ人形を携帯するのはどうだろう」
「お客からは見えないようにします」
「そうじゃなくて」
 バイト先の後輩は、呪いの道具を手放せない元引きこもりのオカルトマニア。

「もうやだ。あんたを追い出して、こんな生活やめてやるんだから!」
「ははは。澄香はかわいいのう」
「人の話聞いてます!?」
 電車にはしゃいだりゲームに夢中になったりと、まったく神さまらしくない《家神》はもちろん出て行く様子はなく、私と神さまの生活はどうしようもなく続いていく。

 神さまは何のためにいるのだろう。誰が作り出したのだろう。
 この、私に見えているものたちは、本当に居るのだろうか。
 不思議な「視点」を手に入れた主人公澄香は、これまでとは違う目で現実をたどりはじめる。人同士の関わりあい。自分の世界と他者の世界。日本人が信じてきたもの。コメディ。人情。変人。キワモノ。信仰と神と素朴な想い。すべてが結実したとき、彼女はひとつの答えに行き着く……。
 笑いと愛を交えて贈る、トンデモ民俗学の世界。



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