後書き。
 
(パラボラアンテナ危機一髪……)
 2002年も終わりに近づいたある日、外出しようと靴をはいていたわたしの頭に、そんな言葉が降りてきました。当時、わたしは友人とのお題出し合い合戦を楽しんでいたところで、しまった、もう1日早く思いついていればこれを出題できたのに。となんだか悔しく思いました。
 そして「これを誰かに出したい!」という思いが募り、とうとう残り46題を15分ほどでひねり出し、「創り手さんにいろはのお題」を配布するに至ったのです。
 まさか、その約1年後に自分がこれを消化することになるなんて、まったく考えていませんでした。考えてたら10題ぐらいにとどめてた。

 1話につき1題消化で、連作となる物語を順番に書いていく。
 面倒ではありますが、お題の消化方法としては最も達成度が高いのではないでしょうか。お題を作った人間が、それをクリアできなくてどうする。そんな思いでここまで突き進んでまいりました。途中、もはや数え切れないぐらい「なんで47も作ったんじゃー!」「誰がこんなアホなお題考えたんだよ! 私か!!」とお約束のひとり漫才を繰り返しのたうちまわってきましたが、ようやく達成いたしました。

 今ここでひとつだけ叫ばせてください。
 ザマーミロ3年前のわたし!!

 ……結局は自業自得なのでひたすらにむなしい試練ではありましたが、今はもうものすごく清々しい想いでいっぱいです。(だからといって残り二種のお題はやれませんもうこりごりです)

 俺魔王の世界はいったんこれでめでたしめでたしとなりますが、あきらも圭一もルパートもその他の人々も、きっとどこかで幸せに暮らしていくのでしょう。それを思うと、なんだか引っ越した友だち(新婚)が隣町で元気にやっているみたいな喜びを感じます。ひとつの連載を完結させるということは、とても満足なものなのだと改めて思い出しました。

 ここまでやってこれたのも、元気に動き回ってくれたキャラクターたち、そしてメッセージをくださった皆々様のおかげです。本当にありがとうございました!

お題公開から2年と9ヶ月4日の日に
古戸マチコ


「俺と魔王の四十七戦」
連載開始:2004年3月7日
連載終了:2005年9月22日
総文章量:648枚と12行(400字詰原稿用紙換算)



なんだか物語の中身に触れ損ねているので各キャラについていろいろ。


長谷川圭一
 小説を書き始めてもう7年になりますが、こんなにも馬鹿で阿呆で暴走する主人公は初めてでした。まあ結末や筋書きは初めから決まっていたので、そこを崩すほどではないのですが、途中が。端々の味付けや小ネタが豪速でアホになっていく面白さを味あわせてもらいました。
 わたしは女主人公の一人称だとつい自分の言葉に近くなり、どの「私」キャラも似たようになってしまう悪い癖があるのですが、彼は男ですから他人事でどんどん遊んでやれました。そういう面も含めて、いろいろと発見できてよかったです。
 前半ではあきらに対する冷たさに非難が集中。暴走が加速した後半ではあまりの変貌っぷりにドン引きされ、最終的には「もうお前はお前でいいよ」と数多くのお客様から(生)暖かい目をいただきました。やるならとことん突き詰めろということでよろしいでしょうか。
 ラストの時点で脱チェリーできているかどうかは、ご想像におまかせします。


水谷あきら
 最初の3話ぐらいまでは、まだ女の子ということを意識して書いていたような気がしますが、途中からはもう何もかも突き抜けて「かわいい生き物」として動かしていました。これを開き直りといいます。
 勇者もそうなのですが、いかにもありがちな魔王の設定はあらゆる方面で書きつくされているので、わたしなりの魔王(と勇者)を書きたいなあということで1から考えて組み立てました。なにしろ世の中にはあらゆる数の物語があるので、これもどこかで何かと被っているとは思いますが、そうやって自分なりに再設定していく作業はとても楽しかったです。
 わたしはキャラクターの外見をあまり細かく設定しないのですが、あきらは最初から「赤ジャージ・低めのふたつくくり・ちっさくて元気な子」という状態でポンと降りてきました。一人称「我」が地味にお気に入りです。
 あと、「あきら」という名前には「両親が跡取の男の子を欲しがっていたのに女の子だった」という設定があったのですが、結局使えないままでした。


ルパート
 生まれてきたその時点で勝ち組のひと。こういうサイト運営を続けていると、どのキャラに人気が出るかは公開前からなんとなくわかっているものですが、ルパートはもう生まれた時点で「いける……!」とガッツポーズものでした。
 なんだかもう、彼女(彼)に関しては、どこからか落ちてきたとしか言いようがありません。わたしの発想容量を越えたところから現れているような気がします。ある意味で神がかっているとさえ思います。わたしがじゃなくてルパートが。
 そんなキャラクターですから、最後までわたしに話を書く情熱を与えてくれました。この長い47戦、ルパートがいなければ到底乗り越えられなかったでしょう。ある意味でこの連載一番の功労者です。生まれてきてくれてありがとうルパート。
 日本での姿がミニチュア・シュナウザーなのは、「執事っぽいから」と「ユンカースの可愛さがわたしの記憶の底にこびりついているから」です。知ってるかなユンカース。


ヤズトゥール
 最初はただの嫌な悪役のつもりだったのですが、作風からして「ただの悪役」が存在しにくい世界なので、結局はごり押しでいい人になってもらいました。というか、このサイト自体「ただ悪いだけの人」がいてはならない雰囲気なので、微妙に面倒くさいのですがそれはまあ置いといて。
 そのおかげで、株が盛り返しましたというコメントをいくつもいただけて大変嬉しかったです。きっとこれからは本当の意味での「腹心の部下」となってくれるでしょう。
 あと名前が打ちにくいので毎回ちょっと面倒でした。ある意味で一番手がかかっている人かもしれません。


ツタハ
 途中はまだ葛藤していたのですが、最終的には「もういいや。大人気なくても」と年齢について考えるのをやめました。おっさんも間近なのにこんなんです。へいじつやへたれリストに新人が加入しました。
 結構真面目にくっつけてあげるつもりだったのですが、なにしろ相手がルパート様なので振りきって高みに上がってしまいました。うん、ツタハごときに掴まえられる女じゃないよね。
 さりげなく気に入っている名前は、日本で花屋だったことにかけてます。


高橋美加子
 誰も待っていない再登場を繰り返した危うい子。書いていてとても楽しかったのですが、多分みなさま的には印象悪めかな……? と思いながらも、好きに書かせていただきました。振られたあとは、彼女の中では あきら=大好き、圭一=石ころ てな感じになってるはずです。そういうもんだ。


クラスメイトの方々とか先生とか
 担任の先生のキャラがあまりにも濃ゆすぎて、最後まで続けて活かせなかったのが少々残念でした。谷と長谷川と水谷でスリー谷とか考えてたけど使えなかったなあ。言わなくてもバレてるかもしれませんが、松永班長が異様にお気に入りです。馬鹿キャラ万歳。
 コスプレイヤー谷の家では、修羅場のたびに中嶋が入り浸って原稿をしているはずです。谷も一緒にお姉さんの原稿を手伝わされて、買出しとかその他雑用なんかも中嶋と二人でこなしながら、結局は腐れ縁の友だちになればいいと思います。男女の仲に発展してもしなくてもよさそう。
 谷と中嶋がこれなんで、残りの松永と藤野が仲良しになるかといえばそういうわけでもなさそうです。わざわざ狭い班内でくっつくこともあるまい。でもこの六人は一緒に海とか遊びに行く仲でいてほしいです。


 ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!


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