本日七月一日は、大王がこの家にきた記念の日。 ということを本気ですっかり忘却し、バーゲン初日を満喫していた私たちは現在必死に「大王に捧げるポエム」を執筆中。何しろこの空き缶似の宇宙人、帰ったら真っ暗な部屋にひとりぼっちで座り込んでいましたので。母も父も留守にしていてろくな紙を食べていないらしいので、心のこもったプレゼントとして自作ポエムをあげることに。 大王は部屋の隅で背を向けたまま、カタリとも動かない。私も靖子も横目でちらちらそれを見つつ、ルーズリーフに愛の言葉を書いては消しを繰り返す。 「出来た! 大王、ホラ食べて!!」 妹の靖子が書きあげた紙を出す。大王はゆっくりこちらを振り向いて、その小さな目だけでニヒルな笑みをふっと浮かべた。器用な。 「ハイっ、誕生日おめでとうのポエム!」 靖子がぐいと押し付けて、大王はようやくそれを口に入れた。 沈黙。大王がもしゃもしゃと食べる間、私たちは息を飲んでそれを見つめる。 大王の口が薄く開いた。 「だいおーう はぴばーすでー。 拾われてありがとう 紙をくってれっつらごーワオ! とどろーきー モモノーキー さんしょーおー 乃木くーん 別人! (台詞:やべえよあの髪型ベッカムじゃないよキューピーだよ) ららら はぴばーすでー ういずあーす 家族みんなでおめでとおーフー!(裏声) (台詞:お姉ちゃん来週提出の課題に使うので類語辞典貸してくださいマジで。) だいおーう はぴば」 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカカカタカタカカタカ 「あっ怒ってる!」 「怒ってるよ大王! なんで!?」 本気で疑問を浮かべる妹、あえてつっこまず彼女のノリに同乗してみる姉の私。 そしてやたら大きなカタカタ音を鳴らし始めた三年目の恐怖の大王。 流行を微妙に逃す同級生乃木アツシ。 今日も今日とて世界は割と平和です。 大王と言葉遊びシリーズ / へいじつや |